少年と神隠し
」のレビュー

少年と神隠し

ゆき林檎

切なくも美しい和風ファンタジー

ネタバレ
2023年5月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ *再読でのレビューです。
私は再読で初読の印象が変わることがよくあるのですが、この作品もまさにそれ。
初読の時にもそれなりに良い読後感を味わいましたが、昨晩、同じ作者様の『玉響』『或る日』を読んだ後の再読の今日は…いやもうなんか半端なく良かった!
登場人物たちへの感情移入がスムーズで、どんどん物語の中に引き込まれていきました。

愛する想いの強さは、一歩間違えれば(逮捕された大河内のように)独りよがりで醜い妄執の鬼となりはてる…
それを嫌というほど知っているであろうテンは、あのように美しい姿のまま、誰とも共に生きて(死ぬ)ことも叶わず、輪廻の輪からも弾き飛ばされているという悲劇。
修一郎との出会い(再会)が数十年のみの輝くような日々で終わるのみならず、テンにとって真実の救済となりますようにと願わずにいられません。
(だって修一郎は徳を積みまくった上人様だし!神通力も健在だし!また一緒に徳を積んで、その力でテンを救うんだよきっと←妄想)

ゆき林檎先生は、特にネガティブな状況については必要以上には多く語らず(描かず)に読者に〈実際はもっともっとしんどい出来事や背景がたくさんあったのだろうな〉と想像させるのがお上手ですよね。
先生の作画や言葉はあくまでも美しく丁寧で、おかげさまでそんな哀しい背景を読み取りつつもなお私たち読者は切なくも美しい物語の中に没入してゆけます。
素敵な作品をありがとうございました。
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