このレビューはネタバレを含みます▼
「後味の悪さ」と言うと語弊があるかもですが、前作「チェンジワールド」に出て来た当て馬の穂積くん。コイツがもう本当に嫌な奴でしかなくて、情状酌量の余地すら無くて ただただ嫌いで終わりました。もちろん主人公カップルのことは大好きでしたが。
「ラブネスト」はその穂積くんが主人公のスピンオフ。
大嫌いな奴のお話なんて読みたくないわー!って思って迷ったのですが、
上下巻を試し読み、更に続編の「ラブネスト2」の上下巻も試し読みした上で、
これは、自分の中の「大嫌い」を少しでも減らしてスッキリ出来るかも、と思い購入してみました。
大正解でした。なんだか穂積くんがとっても愛すべきキャラになってる。素直で可愛い。
「チェンジワールド」での行動は許せませんが、穂積くんと伊藤くんの関係性がすごく微笑ましいものになっているし、穂積くん自身が本当に反省して心を入れ替えて、パートナーとなる旭さんの心を救うことになるわけなので、私自身も救われました。
穂積くんが旭さんと真剣に語り合うシーンは多々ありますが、そのどれもが深い。
恋愛上の薄っぺらい甘い言葉とかではなくて、人生山あり谷ありをある程度経験したオトナの男性の視点だったり、人間としての深みだったり、相手を真の意味で大切に思うからこその吐露だったり、そこには変な駆け引きや打算が無くて、すごく心に染みます。
作者様の人生経験はどれほど厚いのかと、驚嘆するほどです。前作でもそうでしたが、ほんとセリフが良い。
トラウマや過去の遺恨があったりで、様々な障害は発生するものの、オトナらしい冷静で穏やかな空気が全体にあって淡々としつつ、そこに時々 恋慕や性の衝動がグワッと来たりして、その緩急のバランスも素晴らしい。
ナルさんの達観したような考え方や つかみどころのない行動も面白い。
えち描写も情熱的で大変良きです。本編では上下巻それぞれ1回ずつしかありませんが、離婚歴のあるノンケのオッサンでなんかちょっともう枯れちゃってる?と思うほど淡泊な感じだった旭さんが、えっちな穂積くんに影響されてきているのか 段々欲情していく様子がさりげなく滲み出ていて、それもたまらんです。
続編の「2」では オジサンの旭がカラカラになっちゃうんじゃないかって心配してます 笑。