カーニヴァル
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カーニヴァル

御巫桃也

主人公を扱いきれなかった感がある

ネタバレ
2023年5月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ イマイチ鬱陶しく感じていた无の子どもっぽい言動だったり純粋すぎて共感できない思考は、終盤で无の正体が「人類を滅ぼす裁定を下す存在」だと明かされると全て腑に落ちました。无にとって大切な存在である花轢や嘉録、輪の皆も含まれていると分かっていながら人類を滅ぼす選択をしかけたり、皆と別れたくないと思いながらも淡々と役目をこなそうとしたり、実際過去に二度人類を滅ぼした事があったり等、平然と残酷なことをやってのけるある種の「子どもらしさ」が凄く様になっていたんですよね。作中での「思考の構造そのものが人間と違う」という評価もかなり的を得ていると思いました。役目を思い出してからは語彙が増え、不穏な雰囲気も纏うようになって以前の可愛い系キャラとのギャップがかなり良かったです。
ただ、无の正体が割れるまでが長いんですよね・・・。上記のように人間味の無いキャラ(そもそも人間じゃないけど)だからか、正体が割れるまでの无が良くも悪くも癖がなくて、感情移入もできなければ愛着も湧かないキャラになっていました。无の正体や変化、末路は終盤で一番の驚きポイントだろうに、そこでショックを受ける程无を想ってた読者がどれくらいいるのかなと思います。无の設定的に難しいのでしょうが、もう少し何とかできなかったのかなと思いました。
また、もう一人の主人公である花轢の真実の掘り下げや无との別離が明らかに駆け足だったのも残念です。急に打ち切りとなったのかもしれませんが、それはそれとして輪闘員達の戦闘シーンの尺を、もう少し无と花礫に回せなかったのかなと思いました。
全体的に面白い作品であるだけに、それらの消化不良が惜しいです。
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