姉の結婚
」のレビュー

姉の結婚

西炯子

耳が痛い未来予想図

2013年5月7日
ヨリは自称平凡なだけで磨けば光る有能美人。お相手の真木は今をときめくイケメン精神科医…と聞くと、平凡読者を夢見心地にするハーレクイン風ですが、この作品の主人公はあんまり羨ましくない(笑)。ヨリは達観したふうで結局「都合のいい女」体質だし、真木はそっくりの妻を持つほどヨリに偏執し続けてきた純情変態男。揃って不惑を控えながら恋愛観が年相応でなく、道ならぬ色恋に翻弄される様が危なっかしくもいじらしいのです。

しかし恐ろしいのは、お一人様主義でいこうとハラを決めたつもりでいる身(少なくとも私は)では、上から目線でヨリを笑っていられないこと。ヨリの自分のなさ、独身の身軽さからくる無邪気さやだらしなさを客観的に見て苦々しく思うたび、「自分はどうなの?」とブーメランが飛んでくるのです。将来の自分もこんなかもしれないという不安と共に。(イケメンに変態的求愛をされることはないでしょうが…笑)

…と、長崎に横浜の雰囲気を足したような架空地方都市を舞台に、ピュアなムードでこんなドロドロ話が繰り広げられます。ハラハラドキドキできるかは、ヨリへの共感次第。救いがあるかどうかは今後の展開次第ですが…。真木の飄々とした変態イケメンぶりも見どころです。
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