妻が口をきいてくれません
」のレビュー

妻が口をきいてくれません

野原広子

軽薄なオチの残念なラスト

2023年5月26日
軽薄なオチと御都合主義的な展開とテキトーな大団円に収まるラストにガッカリさせられた。一応最後まで完読したので星2つをつけておくが、正直価格と内容が釣り合っていない。広告でしつこく流れて来たから気になって買って観たけど結果が残念だった。
呑気で鷹揚で人の好さがウリの天然な会社員の男性と我儘で意固地で頑なになった子育て主婦の女性の若夫婦が互いの良い点に目を向けることができずに自分たちの関係性を追い詰めて、身体極まった末に、結局、運良く大団円というしょうもないオチの話。
私のように期待して騙されて詐欺に遭う被害者が次に現れないようにこのレヴューでひと通りを記す。このレヴューを見た後でも敢えて読みたいというヒトだけが買って読めば良いと思う。
このマンガは決して上手な絵ではないけど、登場人物の心理描写には丁寧な表現が綴られていて、更に「あの日」や「その日」という小さなナゾを適度に散りばめて先が気になる巧みな展開で読者を惹き込む。
だが、まんまと乗せられ惹き寄せられて合本版を買って最後までみた結果のオチは「夫が何故か真っ暗な隣の家に入って家族の姿が見えずに泣き崩れて大泣きしたことが仲直りのキッカケになった」という程度の低いマンガらしい、ふざけた内容だった。吉本新喜劇のパクり。古典的なオチそのまんまだからガッカリさせられる展開だった。
この夫婦は双方に覚悟のないまま互いに相手に勝手に依存して双方が相手に過大な期待を持って生きている夫婦だから、先に我に帰った方が結果的に幻滅して苛立ったり失望したりするだけのこと。
ここで自分の甘えを棚上げして無自覚なまま無意識のうちに都合よく事実をすり替えて生きている女性が覚悟のない阿呆な夫の気の抜けた失敗でガス抜きできて元のサヤに収まるという御都合主義的な展開が不快だった。
せっかくだから子どもや彼女の期待通りにしっかりと離婚して、一家離散して、全員が艱難辛苦しながらも、苦心惨憺を重ねる中で全員の心が磨かれて最後にはハッピーエンドが待ち受けていたというくらいの劇的な流れで魅せて欲しかった。
使い古されたネタの茶番劇を見せられるだけにしては高額なマンガだと思う。
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