ブラッディ・シュガーは夜わらう
」のレビュー

ブラッディ・シュガーは夜わらう

三堂マツリ

笑顔なんて無くても可愛さ青天井

2023年6月5日
各巻180ページ弱。
人の感情に巣喰うウイルス「ネガ」。それに侵された人を、心に潜ることで治療していく、短話連作。
自由を奪われた苦しみ、大切なものを失った悲しみ、優しすぎるが故の自責の念などなど。エピソードはそれぞれにあたたかさがあり、ネガの巣の描写の不気味さ(実写をコラージュして描かれているようで、それが悪夢感ある)も良かったです。
主人公の3人のキャラクターも良く、正反対な性格の兄弟と、それに溺愛されている感情の無い妹の、確かな家族ぶりがとても好みでした。
2巻に登場する兄弟の幼馴染が、明るく優しく不安定な繊細さがあるお坊ちゃんで、特に好き。3巻で活躍する、兄弟のライバルポジションの二人組の少し拗れた関係も良かった。
と、全体的に非常に良いと思うんですが、連載の軸として「妹に感情を芽生えさせる」という目的を最後まで維持したのが、個人の趣味として微妙。読んでいる内に、別に感情無いままでも充分幸せじゃない?って気分になっていたので。だって、笑顔が無くても、この兄弟にとって妹の可愛さ青天井なんだもの。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!