カッコウはまだカゴのなか【電子単行本】
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カッコウはまだカゴのなか【電子単行本】

amam:

蜜と毒…禁断の実を一度口にしたら戻れない

2023年6月6日
これまたディープな作品で。メリバになるんでしょうね。魔性に嵌まり蝕まれ、足掻きながらもじわじわと堕ちていく男の姿に興奮を覚えます。紗良を引き取ったのは警官としての正義感?同情心? … 否、「おそろしく綺麗な顔」の紗良を見た瞬間から沼に片足を突っ込んでいたんだろうな。魔性の引力と真っ黒な瞳に吸い込まれて…「親子」という枠組みを作ったが為に倫理観と欲望の狭間で苦悩する訳だが、それは自ら紗良の「お父さん」スイッチを押してしまった事による ある意味自爆であり自縛。 天真爛漫さと男を惑わし引き寄せる魅力を併せ持ち、異常な環境下で育った悪影響により とことん緩い貞操観念を持つ紗良。… 要は存在自体がエロの塊なのです。それを目の前にして己れの自制心との闘いに悶え苦しむ優也の姿が一つの見所と言ってもいい。しかし、一度でも味わってしまった蜜の味は苦悶と熱を身体に残し、決して消える事は無く胸の奥でまた味わいたいと渇望する… 毒だ。紗良がある意味ピュアで人懐こく育ったのは前の父親に愛情をかけられた面もあるのかと思ったが、違うだろうな。生きる術と天性のもの。微塵でも愛情の欠片があれば真冬に靴下も履かせずボロボロの薄着で居させないし、年齢より華奢で痩せ細らせたりしないし、何らかの方法で教育を施しただろう。きっとお金が無かった訳でなはなくて、裸でいる時間が長いんだから服なんて必要ないし、成長して男の身体にならない様に 逃げ出す体力をつけない様に食事の量を抑え、疑問を持たない空っぽのままで と知識を何も与えなかったんだろう。紗良自身への歪んだ愛で起きた事件ではなく、「身代わり」として失った時間は余りにも長くて虚しい。紗良を閉じ込める内に魔性の蓋を開けてしまいズブズブと嵌まってしまったんだろうが、愛する人が自分のせいで命を断ってしまった事はどうやって気持ちの折り合いをを付けたんだろう?42項の様に図々しく癒しを求めて目の前の蜜を貪るのみか… 自らはめた足枷を引き摺りながら薄氷の上を歩く優也だったが、己れに内在する本性をズルリと引きずり出され、一気に壊れていく様がいい。執着?嫉妬?狂気じみた愛情?何とでも言うがいい。腹の中のドス黒い欲望を紗良が丸ごと受け止めてくれたらそれだけでいいのだから。共依存?求め合う幸せの何が悪い?しかし 読み終えて見返す3項の扉絵よ… 魔性を飼うのは命を削るな。生気、吸い取られらてるし…
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