初恋の罠





2023年6月11日
浅はかで無鉄砲な若さ、ひたむきさが魅力的なヒロインです。頭の良さと背伸びしたい年頃の娘がおちいる初恋の罠。黒木の政治思想に藤子がはまっていくのをハラハラしながら読みすすめました。ナショナリズム、プロレタリアート、アナキスト、時代に生まれた言葉の熱にうかされるかのように生きた黒木。時流にのって器用に生きているかのような千太郎もまた政治思想の弾圧によって生き方を変えた苦しい過去があり、明治から大正という時代のうねりと息苦しさが生々しい。そんな時代の空気とともに、藤子を守る千太郎の親のような愛がいつしか男女の愛になっていくのも官能的でさすがの読みごたえでした。いつも登場人物の名前のルールがひそかな楽しみです。今回は忘れるくらい夢中で読んでいて半ばで謎解きできました。

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Kiki さん
(女性/40代) 総レビュー数:0件