神のみぞ知るセカイ
」のレビュー

神のみぞ知るセカイ

若木民喜

「リアルなんてクソゲーだ」けど

ネタバレ
2023年6月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 結末で「やられた!」と思った数少ない作品の一つ。
その気分を味わいたい方は、このレビューや巷のネタバレを読まずにどうぞ。
全26巻という私にとっては大長編のこの作品、中だるみに感じられる所があったり逆に急ぎ足っぽい所もあったり、その展開はどうよと思ったり(そこらへんで返し読みが大変な分、星マイナスの4つ)……それでも、最後まで読んで良かった。後付けも色々あるとは思うのですが、気にならないくらい擦り合わせが上手いです。
ギャルゲーオタクの主人公が、その能力を駆使して現実の女子達の心の隙間を恋愛で埋めて行くというこの設定。コンピューターゲームと違って、選択肢は出ないしリセットは出来ないし、初見プレイでクリアしなければならないという無理ゲー。主人公が「リアルなんてクソゲーだ!」って叫ぶのも当然。その辺りの綱渡り感や、後半では壮大な展開もあり、サンデーらしさある少年マンガで面白かったです。
で、ギャルゲーベースのこの物語、主人公が最終的に誰を選ぶかっていうのはやはり最大の関心ごとで。
その選択に「やられた!」ってなりました。
最初はびっくりしたんですが、戻って読んでみると、彼女しかありえないってきちんとわかるように描かれてるんですよね。彼女だけが「思い通りにならなかった」相手であり、このゲーム的物語の外側の存在なんですよ。他の女子達は、ゲーム的な「攻略」がうまくハマって、かつこのゲーム的物語の正式な登場人物の、ある程度想定内で終わってしまった相手だと思うんです。
「ゲーム」という、ある程度の予定調和がある「作品」をこよなく愛する主人公ですが、最も心を揺さぶられたのは予測不可能な「リアル」で、クソゲーであるリアルに自らの意志で踏み出したというこの結末は、少年マンガとしてとても好みでした。
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