こたえてマイ・ドリフター
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こたえてマイ・ドリフター

大島かもめ

凄みを感じる、かもめ先生のハードBL

ネタバレ
2023年6月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 信頼の作者さん買いで、内容も確認せずに読んで、途中からかなり衝撃でした。これまで読んできた先生の作品から、今作のような作品を描かれるとは、全く予想していなかったのです。アメリカの暗い社会背景、上流下流、人種差別、マフィア、犯罪、暴力、殺◯etc…。分かっていたら、あえて選ばないし、かもめ先生の作品で無ければ、途中で挫けたかもしれません。ストーリーの好みで言えば、☆1か、2。でも、まるで一本の映画を観たかのよう、 BL漫画としては、☆5。ずっと漂う不穏な空気の中で、力強く、切なく、穏やかな未来は想像出来なくても愛おしい、そんな作品で、かもめ先生の力量を改めて感じさせられました。
パーティーで出会った白人リーマンのエリオットと、怪しい実業家のロバート(リンチェ)は、すぐにセ/フレのような関係になりますが、実は再会でした。子供の頃、互いの立場を超えて、友人で、初恋の相手。リンチェが警察に捕まった事で、二人は離れてしまったのですが、再会した時、リンチェはどっぷりマフィアとつるみ犯罪を犯してました。リンチェの過去も、辛すぎです。そんな二人だから、幸せな時間は短く、何度も死線をくぐることになります。はっきり言って、どちらも相手を落としていて、いくところまで堕ちちゃいます。そんな関係で、そして唯一無二の大切な相手。離れる選択肢はない。救われるのか、救われないのか、そこがなんとも切ない。
中盤から、何度も生死にかかわることや、残酷な話が出てきます。読む人を選ぶかもしれません。正直、自分には地雷だらけでした。読み返す時は、苦手なところは飛ばすでしょう。ラストの先にも、不安が付き纏い、爽快にはなれません。でも、最後まで読みきれたのは、主役二人の善悪を越えた生き様が、わりと淡々と、ジェットコースターにも関わらず、一冊にしっかりまとめられていたからかな、と思います。読後疲れたし、圧倒されたし、「凄い」が陳腐に聞こえても、凄かったとしか言えません。
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