初恋の灯を君へ
」のレビュー

初恋の灯を君へ

オオトリ

美しく儚い物語

ネタバレ
2023年6月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 蝋職人エイダンの作り出す蝋燭の灯が、幼い頃は屋敷の一室で、日常的な工房の一幕で、エリーが嫁ぐ旅立ちの往路で、エリーの終焉の地・隣国の王都で、二人が生きる時の流れを灯が語るかのように流れていきます。モノクロ画ですが、温もりの色彩が二人を全ページ照らし続けているような錯覚も覚えます。他の作品でオオトリ先生の事を知りましたが、オリジナル作品のストーリー構成も素晴らしい力量に見惚れてしまいます。単発の短いページ作品に、こんなにも情感豊かに語られるキャラの年月を詰めこんでいらっしゃるなんて……。簡単に泣かされてしまいました。身分違いだからこそ互いに打ち明けなかった初恋。でも……晩年のエリーの何とも云えない静かで美しい微笑みは、老齢ながら背筋は真っ直ぐ気品に溢れ、子孫への慈しみを持ち、彼女の長い人生はエイダンの蝋燭と共に歩んできた事が伺えます。予想通りの結末ですが、夫婦となり家族になるだけが幸福な結びではないと思います。二人はそれ以上に結ばれた想いがあると信じられるから。とても読んで良かったお話でした。泣かされましたけれども、良かった。好き! 涙止まりませんけれども!
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