さよならのモーメント
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さよならのモーメント

仁嶋中道

感情の置き所が難しい

ネタバレ
2023年6月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 亮輔と春哉と司、誰に感情移入するかで読後感はかなり変わってくる作品だと思う。


交通事故で亡くなった亮輔が司の体に入ったことで春哉と再会を果たす。高校生の司は母親と親友のことで苦しみ、司の現状を知った春哉が司を放っておけず、亮輔と一緒に暮らしはじめる。

元々、霊感があった司にしか亮輔の姿は見えず、司の体を借りて春哉と話せるようになるけれど、二人の本当の気持ちを伝えあうことはできず、心優しい春哉を好きになってしまった司は亮輔と春哉が両片思いだったことを知っているから自分の気持ちに蓋をして三人で暮らしていくことを願う。


亮輔、春哉、司の心情が丁寧に描かれ、あのとき、春哉が関係の変化を怖がらなければ、亮輔が事故に遭わなければ今と違う未来があっただろうし、亮輔が司を止めていなければ三人が出会う未来はなかったと思うとなんとも言えない気分になる。

物語としては一応ハッピーエンドだけれど、亮輔に感情を乗せて読んでしまったから、切なくて苦しくて、そして、司が羨ましくて、読み返すのは少し時間を置かないと難しい。
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