龍ノ国幻想
」のレビュー

龍ノ国幻想

三川みり

続きが読んでみたい作品に

ネタバレ
2023年6月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 龍と龍の声を聞く人の存在はありつつも、ファンタジーにしては結構現実味のある物語です。生まれや性別、龍の声が聞こえるかどうかによって、人々の見方が違うことが分かりやすく描かれています。だからこそ、異端であった人々への仕打ちが、読んでいて辛く、私も憤りを感じました。能力ではなく、個人の特性や個性だ、という日織の冷静な意見がありつつも、育ってきた環境や刷り込まれた習慣などの影響でどうあっても受け入れられない人達の意見の対立がきちんと描かれています。差別がなぜこうも根強いのか、どうしたら人々の意識を変えられるのか、日織と同じように考えさせられました。最初に思っていたよりも話が重たかったです。
日織は皇位継承争いを勝ち抜き、人々の意識を変えることができるのかが、1~2巻での見所です。
3~4巻で1つの区切りとなっていて、登場人物達それぞれに試練があります。(あまりネタバレしたくなくて、順番に読んでほしいの気持ちはありつつ、2巻までとはまた違う様相を示します。戦や外交、世継ぎ、為政者の資質についてなど、皇位継承後に向き合わなければならない問題に直面していきます。苦しんで、勇気を振り絞って選択して、真っ向から闘って決断した日織達の様子を、ドキドキハラハラしながら読んでいきました。あまり主人公へのご都合主義を感じさせないところもよいです。日織の成長ぶりを見てほしくなります。)
宮廷ものですが、世界観をしっかり作っている印象があり、今後は主要人物のいる龍ノ原以外の、他の八国についてもどんどん絡めていくのかと、続編が気になります。
時代的には飛鳥~奈良時代?くらいなのか、巻末に参考資料も多く載せられております。作中の装飾や建築に関する言葉で、イメージしづらいものもあったので、勉強したくなりました。主な登場人物紹介でイラストがあります。でもせっかくならば本編に挿し絵もいくつか欲しかったなあという我が儘な気持ちが少し残ります。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!