このレビューはネタバレを含みます▼
20世紀初頭のロシアに生きた女性の半生。サーカスの娘、オルガ。
閉じた線画の様式美のような世界には、豊かな色彩と夢の中を浮遊するようなサーカスの魅力が溢れています。オルガの成長を通して、愛と美と生きる喜びに魅了されていく人々の力強さが見えた時、心が震えました。
自分を哀れむ事をやめたら、故郷へのノスタルジーを超えていく。自身の心の炎を燃やす事で、何度も世界を変えていく。大きな世界で、愛する人々を想い、今を生きる選択ができる。
当時2回の世界大戦で世界中が不安定な時代。極端な物資不足と飢饉、ロシア革命…激動の中、翻弄されていくロシアの人々の生活が垣間見えました。
今一人ひとりの心はまだ生き延びているのだろうか、いのちより大切な希望の光は、新たな心を燃やす火種はあるか。
漫画で、久しぶりに味わう感覚です。
山本先生の描ききった世界観の余韻が、自分の世界を内側から変えていくようです。