天堂家物語
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天堂家物語

斎藤けん

アブノーマルな主人公をどれ位許容できるか

ネタバレ
2023年7月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ それによって評価が変わる作品だと思います。主人公は「人を助けて死にたい」という自己犠牲的な信念を持ちますが、他の作品でよくある「純粋に正義感が強い子」だったり「他人の為というより無意識的にエゴを抱く人間くさい子」ではなく、「自分のエゴである事など百も承知な子」です。それがこの主人公が作中外問わず「狂気的」と言われる所以であり、作品の魅力の一つでもあるので、まずここで引っ掛かる人には合わないと思います。また、孤立した環境でまともな教育も受けず育っていて、生理の知識だったり接吻は特別な男女間でするものだということを物語の中盤で漸く知るくらい性の知識にも疎いので、序盤は特に男性に対する危機感も薄いです(その辺の知識を覚えてからは、ちゃんと男性の接近を自衛する様になります)。生い立ちを考えればそれは当然と言えるのですが、自分の「普通」を当てはめて読んでしまう方は特にそのギャップにイライラしてしまうかな、と思います。総括すると、「普通の主人公」に感情移入して読みたい人には、自分の考え方とのギャップでストレスが溜まる作品、逆に、「普通じゃない主人公」を楽しみたい方には楽しめる作品ではないかなと思います。作品の問題点をあげるとすれば、「主人公の異常さ」があらすじや立ち読み部分だけでは伝わらないところでしょうか…。因みに、上位レビューのコメント(恐らく2巻までしか読んでない)がちょっと誤解を招きそうだったので補足しますが、主人公がヒーローをほったらかしにして人助けをしてたのは1話だけで、ちゃんと作中で咎められています。また、序盤でまだ主人公がヒーローにあまり思い入れの無い段階の話なので、そこまで気にするような問題でもない気がします。
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