このレビューはネタバレを含みます▼
美術を専攻する苦学生の東夏大は、家賃激安のアパートの取り壊しが決まり住むところがなくなってしまいます。それを聞きつけた同学年のイケメンおぼっちゃま西島冬司が「困っているなら俺の家に住まないか」と声をかけてきます。冬司とはほとんど会話もしたことも無かった夏大ですが、藁を掴む思いでその話に飛びつきます。前から夏大と知り合いたかったので家賃も要らないと言う冬司は、家事能力ゼロで色々ズレていて実家の豆柴に似ているからと頭ポンポンしてきたり距離感もなんだかおかしいのでした。でも夏大に言われて家事に一生懸命に取り組んだり育ちの良さからくる素直さが憎めません。ある日、酔っ払って廊下で寝ている夏大に冬司がそっとキスをしてきます。翌朝うっすら覚えていた夏大はさすがにヤバいと冬司を意識してギクシャクしてしまいます。結局その時冬司としては豆柴にキスする感覚だったことがわかるのですが、そこから二人を隔てる壁がググッと低くなります。家庭環境もあって天然過ぎて気づけない冬司の自分への気持ちに夏大が先に気づきます。コロコロあったかい仔犬が独りぼっちの王子様に踏み出す勇気を与える読み応えのあるお話でした。