このレビューはネタバレを含みます▼
好みがわかれそうな話。私は好き。短編集『erotica』に収録された【10x3】の続編。
辻(ヤクザ、小さな組の頭、受け、31才ぐらい、横暴)、財津(組の弁護士、攻め、40代半ば、クールな敬語担当)、菊池(辻の舎弟で財津の甥、攻め、20才、バカな巨根担当)という、年齢も性格もいい感じにばらばらで、3人でやるということが思う存分楽しめた。もともとこの作品の存在を先に知り、そのあとで短編集の作品の続編だと知り、とにかくこの作品を読んでみたかったら、短編集の方の購入をどうするか非常に迷ったのだが、やはり短編集の方を先に読んでおいてよかった。
辻がいいようにされているようにも見えるが、財津と菊池は基本的に辻にベタぼれで、シチュエーションも工夫をこらし辻を楽しませようとするので、エロには安心感がある。かけたりのんだりの描写は私はあまり得意ではないのだが、辻が快楽に弱く超女好きな乱暴者なので、かけられたりのまされたりしても悲壮感がなく、いつもよりは平気な気持ちで読めた。
エロはたっぷりあるが、3人以外の脇役たちが切ないというか、はかなげな感じでからんでくるのでエロいだけの話ではない。
財津と菊池が辻の右側と左側にそれぞれ陣取って、それぞれ辻の右側だけ、左側だけを足の指から順番にせめていく描写はなんかすごくよかった。三人でやることの醍醐味を味わえた感じがした。菊池の悲願達成も興奮した。
どういう終わらせ方をするんだろうとわくわくして読んでいたのだが、期待を裏切られなかった。誰も愛さない、自分しか愛さないという姿勢を最後まで辻はくずさない。櫛田やレンの夢を見て泣いてしまったくせにそれでも彼らのようにはならないと辻は言う。ここで変に「愛するのが怖い」とかよくあるような結論を持ってこられるより、誰も愛さない、自分本位で生きると言い切ってしまえる辻の方が私には理解しやすかった。私自身が純粋な恋愛感情というものをあまり信じられないからかもしれない。
一対一でちゃんと愛し合う、誠実な結末を望む人にはおすすめしない。