殿とつばめ
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殿とつばめ

小石川あお

小石川あお先生~~~~!!!!好きっ!

ネタバレ
2023年7月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ O.ワイルドの幸福な王子をベースに四神獣と麒麟の子孫が存在するという明治期あたりを思わせる世界観です。泰平の世に現るという麒麟が殿(王子)なのですが、皆さんご存じの通り「幸福な王子」は最後、王子の像は壊され、燕は南方に渡れず寒さで死んでしまいます。おおかみさんと砂かぶりはハッピーエンドだったけど、今回はどうなるのかずっとドキドキしっぱなしでした。殿は幸福な王子と同様、身を削り施しを授けるわけですが、ここはBLの世界、単なる善行ではありません。それは乙鳥へのひたすらな執着愛なのです。乙鳥が離れていかないようにどんなに止められようが血を流そうが一向に気にしません。後半に向けてどんどん不穏な流れになっていくのですが、もう泣きっぱです。号泣です。渡り鳥の習性を捨ててしまうことも辞さない乙鳥の献身もすれ違って届かない。そして人間は麒麟の存在を軽視し泰平の世の象徴であることを蔑ろにしてしまう。けれど離れ離れになった二人はそれまで関わってきた人たちの存在によって再会へと繋がっていくのです。心に刺さったままいつまでもいつまでも残る作品です。傑作です。
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