このレビューはネタバレを含みます▼
作者の作品を初めて読んだのは「プレイアフターコール」。とても繊細な描写に感動しました。
田舎の図書館で司書をしている主人公 萩原と、東京から戻ってきた大学講師 八月一日・ヤブミの物語。萩原23×ヤブミ34(年上受😩)
最低限の説明しかないこの物語は、何気ない会話と美しい背景と流れる時間の描写のバランスがとても綺麗だなと。
冒頭、図書館で働く萩原がヤブミを目で追ってしまったのは、垢抜けた雰囲気のヤブミ…というのもあったと思うけれど、それ以上に彼から感じた孤独に自分と同じものを感じたからかなと思いました(それはセクシャルな事ではなく…)
描かれていないヤブミ側。彼も働く萩原を見た時、心の中で同じ事を思ったのかな?と。
東京から戻ってきた故郷はあの頃と変わらない空気で、また腐りそうな心の逃避先が萩原の働く図書館だった。そんなヤブミもまた、萩原から腐りそうな心を感じたのかな?と。そんな風に思いました。
2人の心にある似通ったものは何だろうかと思ったら、それは家族、親友、誰にも理解してもらえない孤独なのかなと。生まれ育った故郷、そのコミュニティに自分はフィットしない、受け入れてもらえない。そしてそんな孤独は、誰とも共有する事はできない。それなのかな?と…
それなのに、出逢ってしまったんだな。共感し合える相手が。奇跡だなぁと、読みながら思いました。
出身が同じとか、同じ人種とか、同じセクシャルとか、家族だからとか、それだけで本音を話し分かり合えるというものではなく、同じ孤独を持っていたから共感し合えたのだと、この作品を読みながら思いました。
この2人の始まりは、そういうものだったのかなと… (タイトルも良かった)