このレビューはネタバレを含みます▼
βの八尾はαの九條に負けまいと陸上部で張り合っています。第二の性で色んなことを諦めるのはおかしいと考えている八尾が運命の番の話を聞きます。既に番のいるαが運命の番に出逢ってしまうと、αはフェロモンで猛烈に運命の相手を求め、その本能に抗おうとするの死に至るというものです。αもΩも不便だなと他人事に聞いていた八尾にまさかのヒートが訪れます。八尾は後天性Ωだったのです。八尾のフェロモンに惹かれて集まったラット状態のαをかわす為に八尾は九條に抱かれるのでした。普段からラットの抑制剤や避妊剤を服用する九條の理性的な対応で救われた八尾ですが、Ωとわかった途端に変わる周囲の目や態度にショックを受けます。でも九條はβだろうがΩだろうがおまえはおまえだと言い、ヒートを抑える為に九條と関係を続ける八尾は次第に九條に惹かれてゆくのでした。やがて九條に運命の番がいることがわかります。自分の運命は自分で決めると言い切る九條ですが、九條の本能はそれを拒否するのでした。九條が好きだから運命に背いて死んで欲しく無いと逡巡する八尾が切なく、理性や想いよりも本能や運命が優先されるオメガバ世界の残酷さが描かれます。九條の運命の番である双葉を恨むこと無く、運命に嫌われた者同士と捉える八尾のポジティブさが作品の芯になっています。