副音声はうるさい十分に【単行本版(シーモア限定描き下ろし付き)】
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副音声はうるさい十分に【単行本版(シーモア限定描き下ろし付き)】

英子

才能と大胆さを感じます!

ネタバレ
2023年8月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大好きな作品です。半日読み耽りました。独特なコマ割りや、ちょっと温度の低そうな線で描かれるイケメンたち。シンプルな背景の中で展開される言葉少ない(副音声がなければね)2人の静かなやりとり。 一度読んだ人は2回目は副音声をオフにして読み直しましょう。実際に2人が交わしているのは非常に少ない会話です!

読んでいる側は「言っちゃいなよ!心の声を本人に伝えなよ、どうせ両思いなんだから!もう2人ともチキンだな!!正直じゃないから誤解を産むんだよっ!」とヤキモキするわけですが、それは読み手が2人の本音を全て知っているからで。 本人達にしたら死ぬほど好きな相手の(氷山の一角のような)小さな言葉や仕草を手がかりに、暗闇を手探りするように進んでいるんですよね。
副音声を読まずに実際のセリフだけを読んでみたのですが、やはり副音声なしだと「この一言は本当に愛情と思っていいのか、冗談として流すべきなのか」迷います。

ちなみに私は2人が(相手の言葉を誤解して)絶望する表情が辛過ぎて悲しくなります。
西田くんが(良かれと思って)「部長とは結婚とかあり得ませんから(安心してください)」と言った時の部長の表情。 部長が飴を西田君にあげた時に、西田君はあんなに喜んでいたのに、部長は「西田君に負担に思われたくない」からと「別に意味はない。上司として当たり前だよ」と言った時の西田君の落胆の顔。もう悲しくて私まで絶望します。 作者様の別作品「友達をやめた日」でも、愛する友人に彼女ができて苦しむ主人公が(たまたま風呂上がりに体を見られたタイミングで)「あ、今だ」と【嫌われるためのアイデア】を思いつくのですが、その思いつく瞬間の表情が「絶望」一色の表情でした。 作者様は絶望の切ない表情を描く天才かと思いました。 あ、「大好きな人に触られただけでおかしくなるくらい感じてしまう」表情も、天才的ですね。西田さんが部長に首筋をキスされた時の「あ、あ、、」の表情も、こちらまで切なく苦しくなるほど。「うわあ、好きで好きでたまらない人にキスされてキャパオーバーしてるっ」とギュンっと切なくなります。
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