このレビューはネタバレを含みます▼
イケメンで性格が良く、生徒にも同僚にも人気のある高校教師の佐田は、夜の見回り中に見知らぬ男に滅多刺しにされます。目覚めると傷の手当てはされていたものの診察台に拘束されており、間宮と名乗る男から、自分はもう死んでいて間宮によって生ける屍とされたこと、同種の死骸=人肉しか食べられなくなったことを知らされるのでした。この辺りかなりグロいシーンが続きますが、中盤〜後半はほとんどありませんので苦手な方も頑張って乗り越えて下さい。佐田は人を食べて生きる化け物となった自分を悲しみますが、やがて受け入れてゆきます。自分と同じ境遇のサルを可愛がり、自分の食糧調達に悩み、間宮と意見交換するうちにだんだん間宮の人となりがわかってきます。中高時代の酷い虐めと孤独からマッドサイエンティストとなった間宮の潔癖さと意外にピュアな内面が、過去と共に明らかになります。人を殺すことにも躊躇無い間宮のマッドっぷりが後半には全く違う印象に変わり、数々のエピソードを重ねて辿り着く計算され尽くしたラストに心を掴まれます。エロらしいエロはありませんが萌えは十分にあり、上下巻併せて560頁超の映画を観ているような作品でした。