このレビューはネタバレを含みます▼
私何を読んだんだろうと、しばらく呆然とした作品。なんて繊細な感性待った作者なんだろうなと。こんな風に世の中を見ていたら、生き苦しいだろうなと。
プロットの緻密さが凄すぎて、物語に入ったら主人公のいる社会が怖くて。その恐怖はまるで1984の世界の様だなと。
これはジャンル超えしてないかな?と。同性愛をテーマにした作品と言われたら…少し違和感を覚えます。
死刑囚 薫の心を救う事ができたのは、同じ男性の水沢だから出来た事ではないのかな?と。
そんな薫の心を感じれた水沢は、仲間達と見事にそれを薫の為にやり遂げた。
レビューで振り返りながら泣きそうになる作品と出会ったのは、いつ振りだろうと思います。
物語の世界は今の社会と似た所があるなとそう思ったら、ああ、世の中は少しずつだけど確実にこの物語の様に、自由があると思っているけれど実は監視された社会に向かっているのかな?と。
そして作中の人々の様に、実際に私達もそんな社会を無意識に求めているのかなと。
大衆が感情的になればなる程、その社会はファシズム化していく…のだとしたら、作中の様に何が社会を感情的にさせていて、誰がそうしているのかな?と。
この物語ではそれはマスコミで。そうさせているのは、登場もしない権力者達。
彼らが合理的に動き指令し、その下の者が指令通り仕事をしてまたその下の者に仕事を流していく。
そんな社会が作る空気感は機械的で余裕がなく、毎日同じ事の繰り返し。未来を感じれない社会。
そこに薫の様な感傷に浸れる、誰からみても不幸で可哀想な人物が現れたら、皆、良い人になる事ができて、閉塞的な社会で生きる人達の、唯一のガス抜きの対象物となる。
今日、今、自分は何の為に、誰の為に生きて、自分の幸せとは何だったのか…とそんな事を忘れた人達が、”薫”というライブに熱狂し、または知った様に意見をし、現実から目を逸らす事をしている。それはまるで、ホワイト化した今の社会そのものだなと。
死を見送った、やり切った後の水沢を通して、死生観までもを問う作者。
最後まで描き切った作者は本当に凄いなと。
今ではもう作中の、ある内閣を揶揄する様な描写は出来ないのでは…とも思いました。
作品レビューを読みながら心を鎮めたいと思います。読了して上下の表紙を見たら…愛だなぁとまた涙😩。最高の怪作でした。