殿とつばめ
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殿とつばめ

小石川あお

つばめが可愛い…😩

ネタバレ
2023年8月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ あお先生、新刊✨

今作は大戦前(なのかな)…の日本に、季節を告げる生き物や植物が人と交わり社会にとけ込んで一緒に暮らしている、という物語。

麒麟の末裔の坊ちゃん×ツバメの乙鳥(燕の別名)。

麒麟が居ると世の中が平和で安泰だと言わる程優しい瑞獣なのに、他の瑞獣の一族と比べると…と物語の人々は噂をしている。

だからかそんな坊ちゃんの家は、乙鳥が居た5年前の賑わいは無く、がらんとした屋敷に残っているのは梅の木の(末裔なのかな?)梅さんだけ。
よく見たら正面玄関なのに雑草が生えていたりして、屋敷の傷み方に世の中の不穏さを表している(のかな…と)。

坊ちゃんと乙鳥の関係は、オスカー・ワイルドの「幸福な王子」なのかな?と感じるも、「僕はそんなに優しくない」と乙鳥に言う坊ちゃん。そんな坊ちゃんの切ない想いが良かったです。

特に遊郭。お座敷で意識を失った乙鳥を迎えに来た、坊ちゃんと乙鳥のあのコマ…。はぁ、額に入れて飾りたいなと思いました。

戦争が終わっても戻らない坊ちゃん。
季節が変わらず、世の中が瑞獣の末裔である坊ちゃんを戦争に行かせたから…と。蔑ろにしたからと騒ぎ出す。

読み終わって、はぁ、良かった良かったと浸っていたら、やっぱり暑い。(今日も熱風が)
坊ちゃん達、まだ居るよね?と、想像してしまった。ツバメはオスも卵を産むの???と。(産まない)。

はぁ、だからこんなに暑いのか。

坊ちゃんと乙鳥が幸せな人生だったのなら、作中の様にそれが人災なのだとしたら、この暑さはしょうがない。

また麒麟は生まれて来ると思う、(梅の花が咲いた様に)

ツバメもハチクマも可愛すぎでした。
ハチクマ×ツバメとかあったらな、とか。眼帯していた鳥とか…もう少しその世界に浸っていたかったなと。 それくらい美しく、幻想的な物語でした。

二十四節気で晴明。候は初候。名称は、玄鳥至(つばめきたる)。意味、燕が南からやって来る。季節の魚は初鰹。野菜はわらび、新じゃが等(2023年の玄鳥至は4月5日だったそうです。)

毎年、毎年、その時季になると南の空を見上げていただろう坊ちゃんを想像したら、切なくなりました。
そんな風に静かに、沁みる様な感情を描く作者。

はぁ、良かったです。
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