積木の恋
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積木の恋

凪良ゆう/朝南かつみ

真逆のようで同じ寂しさを持つ二人

ネタバレ
2023年8月21日
このレビューはネタバレを含みます▼ 華やかな容姿を持つ男専門の恋愛詐欺師•21歳の五十嵐蓮は、大病院の御曹司で32歳の医師•加賀谷聡にロックオンします。真面目で話し下手、見た目も地味な加賀谷は、あっという間に蓮にぞっこんになり二人は逢瀬を重ねます。蓮は自分が母子家庭で母の病から借金があること、中卒で工場勤務だと仄めかし、加賀谷は力になりたいと言ってくれます。実は母子家庭と中卒は事実で、蓮はネグレクトの母親に捨てられて施設で育ち、中卒で就職したものの美しい容姿のせいでクビになってしまい詐欺を働くようになったのでした。身体を張ってコツコツ貯めた銀行通帳を見ながら、いつか小さな家で雑種の犬を飼うことを夢みる蓮の幼さが痛々しいです。蓮の為に大金を用意してくれる加賀谷の不器用で真摯な態度が、蓮の根っこにある子供のような寂しさと純粋さを呼び起こします。蓮は自分が欲しくても手に入らなかった優しさ、憧れていた温かさを加賀谷との時間に見出すのでした。親ガチャに外れるという思春期にはどうしようもない不幸から転落してゆく蓮の、純粋さと頑なさ、真っ直ぐさと安いプライド、相反するようで表裏を成す要素が蓮の憎みきれないキャラを形成しており、それを補完する恋人とのストーリーにハラハラします。あっという間に崩れてしまう積み木の恋、それをまた一つずつ積み重ねる二人のお話です。
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