このレビューはネタバレを含みます▼
不幸体質の堂上美記が、仕事で八つ当たりされ、満員電車で怒鳴られ、紙袋も破れて電柱にぶつかったところで真っ白な髪の不思議な男に逢います。「君の不幸をぼくにくれない?」と言って倒れた男を、心優しい美記は自宅に連れて帰ります。男は人間ではなく、宿主のマイナス感情を糧に生きる「あかしびと」でした。不幸続きのせいで深く人とは関わらずに生きてきた美記は、自分が必要とされ役に立つのならと男と契約し、契約の証に男にシロという名を与えます。養分を吸収するのには性行為が手っ取り早いと言われるのですが、それはご遠慮願って二人の生活が始まります。食事も睡眠も必要無いシロは、自分に流れ込んでくる養分の量で、美記の感情の起伏を察知します。シロが美記の感情を吸収してくれても美記の体質が変わる訳では無いのですが、その日あったことや色んなことをシロに聞いてもらうととても落ち着くのでした。それと同時に慣れていた筈の不幸を苦く感じるようになります。一方人間の不幸の感情を糧とする器に過ぎないシロには美記への温かな感情が生まれます。「あかしびと」という設定がかなりふわふわしているのですが、コートを着込んだおじさんの妖精というのが良きでした。