処女執事~The virgin-butler~
」のレビュー

処女執事~The virgin-butler~

沙野風結子/笠井あゆみ

サイの涙の表現が好き

ネタバレ
2023年8月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「処女執事」というタイトルからは想像できなかったストーリーだった。
ただ、いろんなサスペンスとかミステリーとか、その手のものを見たことのある人なら、なんとなく予測のつく展開だと思う。たとえば則雅の心臓が悪いという設定とか、心臓が悪い⇒臓器移植という連想をすると、いろいろ予想がついてしまってやっぱりそうきたか、という思いはあった。また、己裕(受け)の双子の兄のエピソードは中途半端に感じた。
とはいえ、このある程度予測のつくようなストーリー展開ではあっても、サイ(攻め)と己裕のやり取り、関係の変化だけで十分私は楽しめた。
己裕は不本意ながらサイの執事をすることになり、当初は心を閉ざした状態でサイに接するのだが、サイの方は己裕が好きで、なんとか己裕の真の心を取り戻したいと思っている。横暴なようで何か意図を感じさせるサイの態度と、嫌がっていたのにしだいに心を開く己裕、ここら辺の感じが好き。ピクニックでのやり取りとキスシーンもよかったし、己裕が自室を勝手に移り、サイが己裕がいなくなったと勘違いしてあわてて探しまわったとことかもすごく好き。サイが己裕のほくろにキスする感じも、くすぐったくてやさしい感じが表現されててすてきだった。あと、サイが泣いたときに、「泣いた」とか、「涙を流した」とか書かずに「サイの目の中の雪の結晶が溶ける」みたいに書かれていたのもすてきだと思った。いいなと思うシーンがいろいろあった。
沙野先生の他作品では、いつの間にそんなに好きになった?と思うことがあったのだが、本作ではそういう唐突な感じがなかったのもよかったと思う。
それにしても則雅、狂気な人で重要人物であるはずなのに、最後のあまりにあっさりした退場、なんでもかんでも詰め込めばいいわけではないから、まあこれでいいんだろうけど、己裕の兄といい則雅といい、重要人物があっさり流される感じ、私にはちょっと肩透かしをくらったような不思議な感はあった。
いろいろあったけどハッピーエンドで設定のわりに湿っぽくなく読みやすかった。
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