同僚の告白を断ったらオメガバース世界に飛ばされた
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同僚の告白を断ったらオメガバース世界に飛ばされた

渦井

男子諸君は皆一度オメガバ界へ行くが良い!

ネタバレ
2023年9月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 今回、お値下げ&クーポンでお得になったのがきっかけで読んでみたら、これが読後タイトルの言葉が思い浮かぶ快作でした。

主人公の菅田(すだ)。出だしでは、一流大卒のメガバンク勤務を鼻にかけるリーマンで、「…こいつ、受け男にするしかないな…」という考えが脳裏をよぎる、同期ライバルの中原からの告白を受けても冗談としか受け止められないヤツなんです。中原がどうも本気らしいと気付いたときに、オメガバース界に転移しちゃいます。

オメガバ界というファンタジーの世界に、いかにも日本の多数派男子が男の身体と男の精神を持ったままで飛んでみたらどうなるか?そんな、腐女子が作ったファンタジーの世界が、現実(リアル)世界の住人に与える価値観の変化を描いたところが、この作品の面白さなんです!

唐突だけれど、BLはファンタジーとはよく言う言葉。けれど、実は、BL作品がきっかけで同性愛に目覚めた男性はリアルに一定数いるんですよ。

これは、リアルゲイの作者さんの作品に描いてあったことなんですが、その気持ち何となく分かります。
自分にとって、ファンタジーって、現実逃避の場でだけではない。異世界に没入してみることで、価値観を再構築したり、違った視点で現実社会を相対化して見ることができるキッカケを与えてくれる力がある。そんなふうに思っています。BL読んで性の垣根を超えた恋愛の可能性を知った層がいるように、頭の固い男性陣がオメガバ界に飛ばされてみたら、女性がもっと生きやすい社会になるんじゃないか?本作は、そんな気付きを与えてくれました。

主人公の菅田は、オメガバ界で、男の身体と精神で、妊娠し、レ イプされるかもしれないという境遇に最初は愕然とするのだけど。菅田を拾ってくれたαのけいと、Ωのこーの姿を見て、男女の性別の壁が取り払われた世界で、自分の本当の気持ちに気付いていく…ものの、そのまま現実世界に戻ってめでたしめでたし、とはならないのが、本作の面白いところ。何だかんだ言って、中原がいい奴なんでね。菅田もつまらないプライドを捨てて人間的な成長まで遂げつつあって。もうBL様様…泣!
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