猫、恋に焦がれる
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猫、恋に焦がれる

阿部あかね

将太に泣かされるとは思わなかった

ネタバレ
2023年9月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『花にくちづけ』シリーズ6作目。前作でこれまでの行いのツケが回ったと思っていたけれど、あれはまだ序章だった。

詩郎と付き合うことで将太も少しはマトモになるのかも……と思った前作の余韻をぶっ壊す感じで始まった本作は将太の腹黒部分がにょきにょきと顔を見せ、同時に詩郎の無感情で冷めた本質が露になり、一筋縄ではいかない二人だなと痛感。

それでも、将太の気持ちは詩郎だけに向いていて、早めに将太を捨てようと思っていた詩郎も危なっかしくて暴走気味の将太を放っておけず、何事にも無感情だった詩郎が嫉妬心を覚える様子に思わずニヤニヤしてしまう。


将太が初登場した『花にくちづけ』でいっくんに将太の家庭教師を引き継いだヨレヨレの院生が再登場したときは不気味さと気持ち悪さでゾワゾワした。

この男と再会し、欲をぶつけられ、これまでと同じやり方で処理した将太は自分の今までの生き方に嫌悪を感じ、自分で自分の体を傷付ける姿に泣きそうになった。

悪態ついてビッ チぶる将太が詩郎を好きになったことで本当の意味でツケが回ったなと思ったけれど、詩郎もそれなりの変人だから上手に将太を操縦してくれそうで安心できる。


本作には将大や椿、詩郎の両親なども出てきて面白かった。登場する気満々だった詩郎の兄たちが出番無しとなり、出番有りだった父親にキレるところも面白い。もしも次回作があるならば、兄たちだけでなく、花といっくんも登場させてほしい。
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