かみなりなるかな【分冊版】
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かみなりなるかな【分冊版】

ミナヅキアキラ

地震、津波、雷、大雨、崖崩れ、恐るべし

ネタバレ
2023年9月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ いにしえの昔から、私達は自然を恐れて、畏怖すべきものとして生きてきました。粋がって強がって見せた者たちは、自然の驚異の前では、人間の力など取るに足らないものと身に沁みたと想像されます。
小学生の時に雷の怖ろしさに独り不安に震えていた蛍児は、むしろこの世を生き抜くための生命力と第六感に優れた者として、誇りに思ってもいいでしょう。
高校一年の夏に蛍児が雷を異常に恐れていることに気が付いた蒔は、それから雷雨の度に蛍児を気遣い手をつないでなぐさめようとします。
そして、蒔は、高校二年になってクラスが別れても、天気予報を気にしては、蛍児が雷雨の中を一人で過ごさずに済むようにと、心を尽くします。蒔は、蛍児を弟のように思っていると言うのですが、つまりは、可愛いと思っているのです。誰かの言葉に「可愛いは、惚れたってことよ」というのがありましたが、まさしく、そうなのでしょう。
蛍児の方も蒔に対する自分の想いに気付いて、蒔から、距離を取ろうとします。
蒔は、下校途中に雷雨が来そうなのに気付いて、居残り中の蛍児がいる学校に引き返します。そして、間に合わずに雨に降られてしまうのですが、独りうずくまる蛍児を見て、思わず抱きしめてしまいます。
手のひらと人の温もりだけでは伝えきれない、なぐさめきれない時は、抱きしめて人ひとり分の温もりでなぐさめるしかないでしょう。
涙目の蛍児は、可愛いね、蒔。
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