待ち合わせは額装店で【SS付き電子限定版】
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待ち合わせは額装店で【SS付き電子限定版】

ミナヅキアキラ

絵画はそれを生かしてくれる額縁で完成する

ネタバレ
2023年9月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 近は真人の絵に掛ける情熱を理解していなかった。そして、自分を選ばなかった真人の存在を自分の中から消してしまった。自分の想いを真人に話すことさえしなかった。
真人は、留学する前に自分の考えや想いを近に誠実に話すべきだった。そうすれば、近が苦しんで自暴自棄な数年間を過ごすことはなかっただろう。直接言えなくて、手紙に託したのはいいが、自分の死後それを受け取った相手のことを思い遣るべきだった。真人の遺した絵を私達は見ることができないが、短い生涯を掛けて描き上げたそれらは見る人の胸を打つだろう。
願わくば、お互いに一目惚れをしたような近と菱田が、末永く幸せに過ごせるように。
百合草千歳と一居公高については、それぞれの姓名が初めて見る麗しいもので、それだけでも楽しめる。
公高は、千歳が転勤で地元に帰って来なかったら、心の中に千歳を住まわせたまま生きていくつもりだったのだろう。
千歳も、公高が気になっていたのなら、実家に帰省する時にでも、公高に会えばよかった。いくら仕事が楽しくて充実していたとしても、私生活が充実していないと淋しく感じることもあったはずだ。
これからは、空しく失ってしまった年月を補って余りあるように、お互いに相手を想いあって過ごして欲しい。
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