6畳半の惑星
」のレビュー

6畳半の惑星

夏糖

強いテーマを秘める優しいファンタジー

ネタバレ
2023年9月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 居酒屋で働く桜井は、風俗街の異星人を介して違法薬物が取引されていることを耳にします。宇宙港に近い職場の周囲には出稼ぎに来ている異星人が多く、弱い立場の彼らを目にすることも多いのでした。そんな桜井のアパートに異星人の灰が引っ越して来ます。きちんと挨拶に来た灰は、礼儀正しく穏やかな性格でとても素直です。どうやら風俗で働いているらしい灰は会う度にあちこち怪我をしていて桜井は心配になります。我というものを持たない灰には裏表も見栄も嘘も無くて、ぼっち気質の桜井ですが、灰のことがとても気になります。それを、灰と同郷の来実は「地球人の上から目線の優越感」と喝破し、やりたいなら金を払って店に行けと言うのでした。それでも一方的に搾取され続ける灰の無垢な強さに桜井は憧れ、恋だと確信します。やがて灰は身柄を拘束され薬物取引に巻き込まれてゆきます。異星人をリアルの弱い人たちと寓話的に捉えることもできますが、灰が見せてくれる宇宙空間やラブラドライトのような美しい瞳、灰の周りにいつも浮かんでいる青白い光、部屋中のフワフワなどはファンタジーそのものです。エロ無しなのも各話ごとのカラー表紙と共にこのお話の世界観に沿っていました。
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