チェンソーマン
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チェンソーマン

藤本タツキ

被虐〇児の生きづらさ

ネタバレ
2023年10月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 凄いセンスの絵とトンでもな人生を気楽に生き抜く主人公の活躍、スラップスティックで乾いた感情表現に惹かれて読み始め、とてつもなく痛ましい成長の物語だと知って驚愕しました。
デンジは社会の最下層で虐〇され搾取され続けてきた少年です。こんな少年に力と正義を与えたら、それは純粋に暴力的になるのです。だってかれは無感覚なのではなく、恨みつらみを無意識下に沈めているだけだから。
過去にあるのは怖くて痛くて辛いことばかり、振り返ったら潰されてしまいます。だから、彼は辛い経験は忘れて目前の欲求に従い続けます。それは酷薄さではなく、生存のための適応メカニズムなのです。
第1部で生存のメカニズムとファムファタルの支配を描き切り、第2部ではアサとデンジのトラウマとともに弱者を搾取するシステム自体を描く方向に変換したと思ってます。どんな思想もシステムとして成立すると構成員の搾取に向かう。狂ったシステムの暴走と破滅が主たる柱かと。
この世界をリセットするために、ポチタとチェンソーマンの記憶は表面上消されたけれども、それは無意識化に残りデンジはもう子供ではいられない。第1話と全く同じはずの小屋で目覚めたデンジは、もう無垢な目をしてはいないし、喪失や失意を知ってしまっている。だから、パワーと出会い公安に復帰しても、人命を尊重する職員として振舞うし、アサとの距離も詰めることなく遠くから見守っている。
自省も含めて失望を知ってしまったデンジの行動は軽やかさも破天荒さもない。でも、彼はやっと成長を始めている。
被虐〇児の生きづらさとそれを強制する社会の残酷さを、この上なく正直に描いた作品だなと読了して考えています。
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