アラベスク(完全版)
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アラベスク(完全版)

山岸凉子

バレエの真の魅力を伝えるバレエ愛漫画

ネタバレ
2023年10月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ バレエ漫画と言えば山岸涼子先生と確信を持つことになった漫画です。バレエ的な身体の美しさは日常的な美しさとは異なるので、デッサンがどんなに上手な漫画家さんでも「バレエを踊る身体はこうあるべき」という基本の理想がないと、説得力がない絵になってしまいます。例えば、ダンサーが理想とするグッとのびた膝としなう甲を持った足は、日常の中ででは曲がった病的な足だったりします。漫画的なデフォルメはありますが、その辺の美のツボを熟知されているところに、まずは安心感を持ちました。
ですから、バレエとは何かを考えながら読み進み、美しいポージングと共に見せられる」「青白く透明な真のロマンチックバレエ」や「バレエの叙情性を理解した時には体がついてこない」といった名言が心にズシンと響いてきました。
ロシアのバレエに詳しくなってから読み返すと、圧倒的な踊り手を生み出すロシアの教育システムや劇場のコーチングシステムへの解釈ができていなかったり、「青白く透明」なのは『ラ・シルフィード』ではなく『ジゼル』第2幕や『レ・シルフィード』であることなど、粗も見えてきます。
それでも、この作品の中のバレエ愛は本物。166cmの女性プリンシパルバレリーナやラーラのしなう脚は、この漫画の舞台となったマリインスキー劇場では今やスタンダードになっています。そしてノンナが目指したパートナーから自立したバレリーナというのも、この劇場のプリマであるヴィクトリア・テリョーシキナが実現してくれました。
かなった夢の証を堪能しながら、この漫画の先見性の凄さバレエ愛の深さに感動するこの頃です。
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