猫屋敷先生と縁側の編集者 【SS付き電子限定版】
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猫屋敷先生と縁側の編集者 【SS付き電子限定版】

砂原糖子/笠井あゆみ

笠井あゆみ先生の美麗表紙に猫三昧の贅

ネタバレ
2023年10月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙は笠井あゆみ先生の数年前の絵です。現在の作風と少し違いますが、少し古風なところが作家先生の家の縁側での一齣(ひとこま)という風情があって興味深いものです。此の表紙を見て購入を決めた人も少なからずいるものと思われます。
実際の小説の中身はこんなにもほのぼのとしたものではありません。
作家の本屋敷は初対面にも拘わらず晶川夕麻に「乳首も○○○も真っ黒」「減るもんじゃなし」などと非常識なことを言ってきます。対する晶川も売り言葉に買い言葉のような心境になってしまったのか、お望みとあらばというようにシャツを全開にして胸を見せますが、触ろうとした相手に「ただでは見せられるわけない」などと言葉を返してしまいます。こうなれば、最初からお互いに相手をそういう目で見てしまっているのです。
本屋敷は、見た目とか気風の良さから晶川を見誤ってしまいます。原稿を餌に晶川に迫ります。まるで、昨今の芸能関係者か古今東西の権力者のような卑劣な行いではあるのですが、好奇心の塊になってしまった本屋敷はそうでもして晶川を手に入れたいと思ってしまったのでしょう。けれども、勉強家の割には不勉強で、晶川を辛い目に遭わせ続けて少しも気が付いていません。
話の筋を面白くするためにこういう設定にしているのだと思うのですが、本屋敷の人間性を疑うようなことになってしまって、彼の人となりがつかめません。後々の展開にしても話の流れを先に作って後から無理やり落とし込んだ感があって、興ざめもいいところです。登場人物のそれぞれの性格や行動や思考については一貫させてほしいと思います。終わり良ければ総て良しではないのです。
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