鬼は笑うか
」のレビュー

鬼は笑うか

木村ヒデサト

先のことはわからない、けど

ネタバレ
2023年11月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『俺の春』を読んで衝撃を受けた作家さんで、こちらがセールにかかっていたのでこれを機に購読。
なかなか衝撃が大きい今作、大人が子供に対して乱暴するシーンがあるので読む人を選ぶかもと思いますが、センシティブな問題をしっかり取り上げていてリアリティもあり、読んで良かったなと思っています。

普通の中学生・星谷×クラスでも浮いた存在の柏瀬。
クラスに落ちていた生理用品を俺のだと言ったり、水泳の授業を休んでいる理由が生理だと言ったり、体育教師のtnpを咥えていたり、星谷にとって柏瀬は謎だけど気になって仕方ない存在に。
柏瀬の父親からの暴力や体育教師とのことも無理矢理だったと知り、友達として支えてあげたいと一緒にいることが増え、それが高校になっても続きます。
時間が経ち、お互いに思い合っているのに離れて行こうとする柏瀬に、好きを伝えるストーリー。
中学生の時の話は、主人公たちの多感な時期に親のこと、教師のことで振り回された柏瀬が可哀想すぎた。
どこにも居場所がない彼にとって、星谷は心安らぐ場所だったのかな。
高校生になって、親のことはある程度時間が解決してくれたんだと思うけど、壊れた家庭が元に戻るわけではなく。そんな現実を見て、結婚しても先のことはわからないとわかっている二人だからこそ、今一緒にいても不安が付き纏って離れないんだな。
妊娠検査薬を試す奇行も、ずっと一緒にいたい気持ちの表れだったんだと思うとなかなかに深いと思いました。
星谷の涙で私も泣いた。
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