氷竜王と炎の退魔師
」のレビュー

氷竜王と炎の退魔師

犬飼のの/笠井あゆみ

慈しみの氷の王子慈雨と炎の退魔王子ルカ

ネタバレ
2023年11月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 慈雨は副寮監のルカのことを愛想が良すぎるとか怪しいとか胡散臭いとか思っていたけれど、彼と日常的に接するに連れて、彼が微笑みの陰に隠している想いを知り、彼に惹かれていることに気が付きます。そして、夢うつつに見た自分の指の傷跡を確認するルカの姿は夢だったと思い込もうとします。そんな風に懐いたり信じたりする慈雨を感じて、ルカは伯父夫婦の手から慈雨を守ることを決めたのだと考えられます。つまり、ルカは慈雨の信頼に値する自分であろうとして、慈雨の為に凶弾を受けたのでしょう。其の痛みは慈雨を利用しようとした伯父達の言いなりとなって慈雨を酷い目に遭わせてしまったことに対する罰と償いの意味もあるのだと思います。また、其の傷があることで、可畏の怒りはある程度抑えられたのだと言えるでしょう。
学校のプールでの悪霊退魔案件と此の慈雨誘拐未遂事件で二人の心の結びつきは強くなったと思います。
倖に対して持っていた気持ちは双子の弟に対する慕わしい思いに戻ることになって、慈雨もどんなにか喜んだことでしょう。半年前までの思いに落ち着いたので、思春期の気の迷いと片づけたい不安な恋心だったのでした。今は慈雨の恋心はルカに向かっているけれど、ルカが大学生になるまでは封印しておかなければなりません。これからも親しくしたいのであれば大事に育んでいきたい恋心です。
2⃣刊では、親睦の為の簡易カラオケで、『アイノウタ』と『恋曜日』をお互いに贈り合った慈雨とルカ。二人が相思相愛なのは身近にいる人には知れてきます。
慈雨の母親の誕生日会に、倖が慈雨の真意を汲んでルカを招いていました。その時にルカは可畏に憑いている恐竜や人間の悪霊を除霊します。
二十年前の卒業生によって埋められたタイムカプセルを当の卒業生が掘り起こしたのに連れて様々なことが起こります。其の解決を求めて旅した大阪で、常軌を逸した研究者等によってルカをむざむざ人質にされてしまったことを大いに反省した慈雨です。けれども、一連の出来事によって、慈雨とルカの仲は深まる兆しを見せ始めます。此れで、一先ず、慈雨とルカの物語は置いておくのでしょうか。次は?倖?
処で、一つ気になるのは、ルカが自称に「俺」を使うことです。終始違和感がありました。美しい青年には「僕」か「私」を使って貰いたいものです。言葉遣いはとても大事なものです。遣う人の印象まで左右してしまうからです。
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