RIKOシリーズ【全3冊 合本版】 『RIKO ─女神の永遠─』『聖母の深き淵』『月神の浅き夢』
柴田よしき
主要登場人物一人として“いい人”がいない
ネタバレ
このレビューはネタバレを含みます▼
人、そして組織の2面性、不完全さがお話しの随所に出てくる。ここに書かれる警察って実に酷い組織だし、出て来る人達も所謂の善人なんて一人もいない。“正義”の体現であり法律の信念の人である麻生も犯罪者だし、やり手弁護士はヤ◯ザお抱え、嫉妬で同僚を輪カンするような警察官とか。残酷なヤ◯ザは人の命を救ったり、主人公の緑子も死ぬ程気が強いけど、不倫相手の元妻に変な罪悪感があったり。都会の女神的な存在の緑子を羨ましいなんて思う人はまずいないでしょう。でも仕事とか恋愛の泥々とした何処かの一部に共感出来るかも。彼女が身体を張るのはいいけど、男なら殴る蹴るの暴行の時に女性だからとレ◯プされてしまうのは可哀想。同僚に輪カンされてしまった時、あれは男だったらどんな暴力も無かったと思う。出世したのが向こうが勝手に弱く劣勢のはずって思い込んでいる相手で“女”ってだけで本当に不条理。この輪カンの首謀者の男、最低の野郎だけど、それ以外ではなかなか格好良く心優しい一面もある人物だったりしする。でも最低は最低。『永遠の女神』も『聖母の深き淵』も推理小説として面白かった。『永遠の女神』に出て来る警察幹部は見事な程にクソ野郎で、時代劇にでも出てきそうな悪徳代官みたい(笑)『聖母〜』が私は一番好きかも、子を殺す母親と全てに無理解の父親。シリーズ最終作の『月神の浅き夢』は犯罪に派手さがあった分、何か大味となった感じ。ヤ◯ザの若頭となって登場する練、これ以外の道が彼にあったとは思えない。もし彼が再審を望みそれで無罪が確定したら、そこから始まる何かなんてあるのかしら?
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