流沙の記憶
」のレビュー

流沙の記憶

松岡なつき/

彩先生の表紙絵が小説の世界観を巧みに表現

ネタバレ
2023年11月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 松岡なつき先生の小説は『H・Kドラグネット』を既に読んでいます。主人公二人の活躍が面白かったのですが、余りにも多くの人が死んでいくのが辛くて、乃一ミクロ先生の表紙絵が気に入っていたのですが、今は持っていません。
その点、この小説では人は生き様を見せますが、左程残酷な場面はないので、安心して物語の世界観に浸ることができます。
先生がかなり前に書かれた小説のようで、この時代は煙草を吸うのが当たり前だったのか主人公が煙草を吸うことと、自分を指す一人称に「俺」を使っているのがどうも気になりました。私は「俺」を使う人に余り良い印象を持てないのです。
しかし、アレンは語学の習得に才能があり、聖刻文字やアッカド文字や古代エジプト文字を読むことができます。それが彼の時空移動の際に可成役に立っています。しかし、書き言葉は習得できても、実際に話されていた言語とはまた別物で、意志の疎通に最初は支障がありましたが、そこは得意分野の彼は瞬く間に彼等の話す言葉を覚えます。
古代のエジプト人は金髪だったようですので、アクナーテン王の義弟のネフィルが金髪なのは正しいのです。彩先生の描くネフィルは古代でも現代でも美しくて眼福でした。ネフィルは現代にタイムスリップした後途轍もない苦労をしますが、何時か再びアレンに巡り逢えることを心の支えに生き抜いていたのでしょう。
それは、アレンについても言えることなのですが、アレンはアクナーテン王の遺跡発掘という目指す目的があるだけでもネフィルが味わった絶望と悲壮感には到底及ばないでしょう。しかし、アマルナで発掘調査をしていれば必ずネフィルに遭うことができると僅かながらでも確信を持てたのは幸いでした。
渋い色男になっていたネフィル。この世には常識では考えられない不可思議なことがあるのだと想像するだけでも愉しいひと時でした。松岡なつき先生、素的な小説を世に出してくださって有難うございました。
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