こたえてマイ・ドリフター
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こたえてマイ・ドリフター

大島かもめ

人生を狂わせても愛する人を守りたい

ネタバレ
2023年11月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 第一次世界大戦後、狂乱の時代が終焉を迎える前の1929年のNY。自動車会社で働くエリオットは、パーティでチェーンストア•オーナーで高級ホテル住まいのロバートと知り合います。株式の活況で好景気に沸くNYでも群を抜いて羽振りの良いロバートは非合法ビジネスに手を染めていると噂されています。アジア系らしい黒髪に黒い瞳のロバートに、エリオットは幼い頃の友達を重ねます。生まれ育ったサンフランシスコのチャイナタウンで混血の少年と仲良くなったエリオットは、いつか二人でお金を貯めて海の見える家を買おうと約束したのでした。少年と過ごした忘れられない時間と別れとはエリオットの心の奥底深くに刻まれており、そのせいもあってか二人はすぐに身体の関係を持ち、エリオットはロバートの暮らすホテルに入り浸るようになります。そんなエリオットに聞こえるかのように闇取引の電話をするロバートをエリオットは不審に思うのでした。背景や服装なども時代を映していますが、バブルの絶頂から世界的大恐慌となる直前の空気感と共に二人の束の間の幸せとが儚く胸に迫ってきます。幼少時の人種差別からくる体験からも当時のリアルが伝わってきます。最後にエリオットが告白する罪によってエリオットは楽になれたのでしょうか?切ないけれど映画のように美しくドラマティックな作品でした。
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