渇仰
」のレビュー

渇仰

宮緒葵/梨とりこ

唯一無二・執着愛の最終形態を見たよう

ネタバレ
2023年12月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 皆さんのレビューを読んで、なかなか決心がつかずに長いこと積んであった作品でした。どのレビューも「とんでもない」「もの凄い」「半端ない」「ホラー」「狂気」などインパクトのあるフレーズが飛び交っていて、そうかと思うと意外にもその人の評価は高いという…謎な部分があり、戦々恐々と読み始めました。
結果、私はハマってしまい面白いと思いました。とにかく達幸の思考回路やら素行やらが尋常でなくて、ネジだったら抜けてるのは1本や2本ではないし、明良が絡んだら最後、独創的かつ独善的な主義主張が行き過ぎてるし突き抜けてるしで、(本当は良くないのでしょうけど、すみません)笑ってしまいました。人間、理解不能な事象に遭遇したり想像の限界を突破されると、現実逃避して危機的状況を何とか乗り越えようとするのでしょうか。
3巻までくると達幸の迷走ぶりが半端なくて、「明良の犬になりたい」が、臨界点に達してもはや犬になりたい人なのか、人のような犬なのか、はたまた全然違う何かなのか、どう解釈したらいいのか分からなくなりました。それ程の狂気とも言える執着・愛着を表現する高い文章力は素晴らしかったです。読者でさえ、その場の一登場人物になって達幸のセリフや演技に引き寄せられ、引き込まれてしまう力があったと思います。
達幸が明良関係で思いつく事の殆どが名案でなく迷案で、明良にしてみれば狂気で脅威で何かと元凶とも言える存在なのに、結果的に害ばかりでもないよね…という展開も面白いです。執着愛が好きな人もちょっと変態ぽい攻めが好きな人も、新しい扉を開かれること間違いなし、どなた様にも執着愛の最終形態が見られる唯一無二の作品だと思います。
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