不器用エリートと不運な青年のもどかしい恋

ネタバレ

2023年12月13日

このレビューはネタバレを含みます▼ 突然の交通事故で両親を亡くした片岡志貴は､大学を辞めて3人の弟を育てる決意をします｡昼間の営業の仕事だけでは暮らしていけず､夜のクラブでウェイターのバイトを始めたところで神谷直人と出逢います｡32歳のエリート神谷は落ち着いた大人で､3年前に病死した暁という恋人に似ているからと志貴に身体の関係の無い援交を申し出ます｡志貴に好きな相手ができるまで､都合のつく時だけ会ってくれればいいと言う神谷は､決して恋愛関係にならない為に金銭による線引きを申し出たのでした｡志貴もまた気楽な大学生のフリをすることでキツい日常を忘れることができるのでした｡悔いの残る形で恋人を失い過去に執われる神谷と､厳しい毎日に未来の見えない志貴との間には常に死者である暁がいて二人の恋を阻みます｡不幸な攻めと不憫な受けになんとか幸せになって欲しくて､ハラハラしながら一気に読んでしまいました｡さらに神谷視点で描かれる巻末の2編が素晴らしいです｡『Shine』の神谷と暁の邂逅シーンの切なく安らかな美しさは『おやすみなさい､また明日』に通じる作者さまの本領が発揮されており､『Chill』はタイトルのごとく個性溢れる片岡4兄弟と神谷とのまったりとしたひと時が切り取られています｡

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pug さん

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