星降る王国のニナ
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星降る王国のニナ

リカチ

無垢で純粋故に残酷な主人公

ネタバレ
2023年12月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 何処かで見たような、ストーリーはありきたりな物語です。主人公がスラム街出身の特別な瑠璃色の瞳の持ち主だったことから始まる物語であり、同じように亡き皇子の替え玉としてで皇子の座についた青年と主人公は恋に落ちます。

主人公はやんちゃでややもすれば厚顔な性格のじゃじゃ馬娘で、自分の正義を他人に押しつけて行く・他人を巻き込んでいくタイプです。

彼女はスラム街出身なので、自分の欲求・考えに率直で素直であり、彼女がこれから生きていく世界に住まう高貴な人間達には、その行動や考えが絵空事で動いてきた自分の取り巻き達とはあまりに違いすぎるために、非常に興味を引き惹き付けています。

…作品のイラストや表現力は申し分なくとても美しい絵だと思いますし、キャラは生き生きとしていてどのキャラも魅力的で読みやすいし引き込まれます。が。

私はこの物語の主人公の人間的本質が序盤正直嫌いです。自分の欲求や考えに従って行動するあまり、周囲の人間達を引っかき回すだけではなく、自分が今置かれた身分が持つべき責任・行動が生み出す犠牲などを、どれだけ言われても主人公は浅慮な為に押さえる・とめることができません。

彼女は純粋にその場その場で思ったように理想を胸に行動・発言していますが、結果的には浅慮で自国と自国にいる思い人以外彼女はどうでもよい、無責任な結末という結果を生み出していきます。

9巻前後は特に、彼女の行動が読み手にとってたまたま好ましいから読めている物語のように思えてなりません。

純粋であり、可愛らしく好ましいから、まだ物語としてまとまっており受け入れられているのですが、良く考えてみれば彼女がもしもサイコパスだったら、あんな風に浅慮で衝動的思考から生まれる判断・行動をしたらどれだけ甚大な被害になっているだろうかと薄ら寒く思ってしまいます。

今後は本物の星の巫女が出てきて追放されて、彼女は「ただのニナ」に戻され国を追放され、自分が何者なのか。自分が本当は何を成すべきかをちゃんと哲学したり、思慮深く考慮し行動して生みだしていく物語になっていくのだと思います。

そしてこの先、彼女と関わる人がどうなるのか、何が起きて誰が最後隣にいるのか気になります。おおよその世の物語のながれでは、黒髪の王にそのまま靡いていくのでしょうが…私は白髪の王の物になって欲しいと願ってしまいます。
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