ENNEAD【タテヨミ】
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ENNEAD【タテヨミ】

MOJITO

戦争の神、セトをめぐる神々の愛憎劇

ネタバレ
2023年12月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ もともと電子コミックは読まない人間だったのですが、2022年11月にTwitterの広告に釣られて無料分30話を読んだら、見事にエネアド沼にドボンしました。
絵柄の美しさや登場人物の魅力は勿論の事、古代エジプト神話に基づいた時代考証の丁寧さには本当に素晴らしいに尽きます。
主人公のセトは砂漠と戦争の神で、実兄であり、前エジプトの王であったオシリスを殺害、そして、オシリスの妻で魔法の神であるイシスの息子で後のファラオの化身となるホルスがセトの暴政によって疲弊したエジプトを救わんと、セトに勝負を申し入れるところから物語はスタートします。
しかし、エネアドは単なるホルスのオシリス殺しのセトへの敵討ちではなく、セトが負う悲しい過去、悪役に描かれているセトの本来の優しさ、セトをモンスターにした張本人は誰かなど読めば読むほどのめり込んでしまいます。
幼いホルスと、疲弊して自分自身さえも憎んでいたセトとの出会い、贖罪の旅でセトに全身全霊で寄り添うホルス、徐々にホルスに心を開いていくセトなど、様々な伏線が次々に繋がる展開は目が離せません。また男性キャラだけでなく女性キャラも魅力に溢れてます。BLと言えば、女性はモブになりがちですが、エネアドに登場する女性は女神も神官も皆、きちんと自分を持っていて魅力的です。ヒロインとも言えるイシスは勿論の事、万物の創造神であるラーも迫力と知性と美貌を兼ね備えたカッコイイ女神です。
話が進むにつれ、ホルスとセトの距離が縮まって来ているのが本当に嬉しいです。ホルスは、涙が出るほど甲斐甲斐しく、セトに尽くし、世話をして、いかにホルスにとって、セトが大事で大きな存在なのかが切々と伝わってきます。髭の異国神や、実父のオシリス、実はホルスの異母兄だったアヌビスなど、セトをめぐる愛憎劇はまだまだ続きそうですが、ホルスのセトへの真心と愛情はこれ以上深いものは無いと思える程、セトを心底愛しています。セトは自責の念から、素直にホルスの好意を受け入れられないのだと思いますが、ホルスが欲しいのは、ただ一つだけ、セトと共に生涯を過ごすこと。こんなにも長い時間、一途に人(厳密には神ですが)を愛し続ける恋に出会えたホルスも、こんなにも深い愛情で愛されるセトの二人が羨ましいです。いつかホルスとセトが結ばれる日を夢に見ながら、続話を待ちたいです。
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