大奥
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大奥

よしながふみ

徳川そして近代を繋ぐ流水紋の錦絵巻

2023年12月31日
NHKドラマ10大奥で読み返しをした者です。「表」の歴史と「裏」のSF的、あったかもしれないもうひとつの日本の近世。ドラマではオープニングにお万好みの流水紋が差し挟まれ、この紡がれる歴史の繋がり、ゆく河の流れは絶えずしてしかし元の水にあらず。其々の将軍の喜びや悲しみ、不運はあれど不幸とは限らぬその世界の中で、史実とされる「表」の歴史を繋ぐ煌びやかな花錦の衣裳を丹念に織り込んだ作者の構成と、縫い込まれた銀糸や刺繍のような愛らしい日々の人間一人一人の心模様。細部に渡り美しく人間らしい作品でした。
将軍の器は、世を思い大局を見極める志に基づく決意である。時代が変わり、八代吉宗公が大御所の伝説になっても、お万の方が歴史の中の人物となっても、家茂公まで保たれたその心の器の美しさに心打たれる。ありがとうございました。
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