ラブ キス(2)
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ラブ キス(2)

一穂ミチ/yoco

簡単に元に戻らない戻れないもどかしい二人

ネタバレ
2024年1月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『キス』の続編もしくは2巻に当たる作品です。二人の関係は「覆水盆に返らず」といった感じで、お互いに気持ちが残っていて相手以外の誰かでは代わりになれないと分かっていても、簡単に元には戻らない…戻れない…もどかしさが伝わってきました。
明渡が気にしていた実留の境遇は、かつて苑が置かれていた環境に似ていて、明渡が苑と重ねて深入りするのは分かるのですが、苑は逆に拒絶に近い反発を見せます。この時の苑の心情・行動を明渡は意外に思ったようですけど、私は何となく分かる気がしました。自分の置かれた環境(育児放棄とか放置子)は、大人になって客観的に見ればそうだと分かっていても、認めるのはとてつもない苦しみを伴うと思うんです。認めることが「あの時の自分は可哀想な子だった」と自分で自分を晒すような、苦痛を自らに課すようなものだとするならば、苑の行動は理解できるし納得できました。
苑は、実留を救うことで過去の自分も今の自分も救われるような気がしたのかな。2巻を通して、心が締め付けられるような苦しさと浄化されるような安らぎとを教えられた気がしました。
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