このレビューはネタバレを含みます▼
朝から夜まで休む暇なく働く薬師が、日常の忙しさに嫌気がさして井戸に飛び込むところから始まるお話。
いきなり人生を終えようとする場面から始まるとは思えない程、明るく楽しく、心に響く物語です。飛び込んだ井戸の先が冥府に繋がっていたという驚きの展開にも怯むことなく、あっさりと状況を受け入れるコレットの寛容さ。人生に疲れていたけれど、目の前に患者がいれば全力で治療しようとする一生懸命さ。彼女の強さと優しさと明るさがこのお話の道筋となっています。
偶然の出会いから、死者の世界を覗いたり、様々な神様と交流したり、初めての恋をしたりと世界が広がっていくコレット。それでも彼女の核となっているのは青服としての誇りであり、薬師としての生き方です。彼女の辛い過去を支えた薬師の先生たちや兄や姉、彼女の背中を追いかけてくる後輩たち。みんなの想いが繋がって青服たちの活躍や人々の希望が未来に続いていくというのは素晴らしいなと思いました。どん底のスタートから、こんなにも前向きで生きる活力を与えてくれるお話はないのではと思います。
そして、そんな真面目な場面のみならず、冥府のガイコツたちとの面白すぎるやり取りが最高です。ハリーやコツメくんなどコレット大好き派とのやり取りはもちろんですが、コレットに対抗心を燃やすガイコツたちのハデス様愛が最高に尊いです。そんなちょっとした愛と笑いがあちこちに散りばめられている面白すぎる物語です。
また、忘れてはいけないのはハデス様との恋模様。ハデス様の真っすぐな愛情には読者もドキドキさせられたし、甘いハデス様への対応に戸惑いながらも恋を覚えていくコレットは本当に可愛いです。
すでに1話目でタイトルとの齟齬を生んでしまったこの作品、まさか最後の最後でそんな素敵なタイトルの回収の仕方をしてくるなんて、作者様のアイデアは天才だなと感心しました。コレットの生き方に励まされるお話です。