このレビューはネタバレを含みます▼
大学で建築を専攻する鴻上綾斗は両親を知らず施設で育ったために「家」や「家庭」がわからず、人の暮らす建物をイメージ出来ません。ある宵の口、綾斗が立ちくらみを起こした時に、大丈夫かと大人の男性に声をかけられます。それだけのことでしたが、その後男性が保育園で小さな息子を抱き上げているところを見た綾斗は、その神々しいような温かさと優しさに胸が一杯になります。この人達を守り安らがせる建物を作りたいと思った綾斗は早速その保育園でインターンシップをさせてもらうことにします。そこで例の親子•医師の都倉修一郎と凛と知り合い、二人の生活に深く関わるようになってゆきます。やがて自分の思いを上手く言葉にできない4歳児と理知的で感情を一切排したような修一郎の親子に、たった一つついてしまった自分の嘘に綾斗は苦しむのでした。二人の愛は静かにゆっくりと育まれてゆきます。綾斗が聴診器でことりと一つだけ聴いた修一郎の心音にドキドキするシーンがエモく、また脳外科医の修一郎かスイカを完璧に半分にカットするというシュールさも面白かったです。お互いの欠けたピースがピタリと嵌った上に純真無垢な凛か加わり、ふんわり温かく優しい家庭か誕生します。