このレビューはネタバレを含みます▼
『官能童話シリーズ』はどの作品も簡潔で主題は明瞭です。私たちが原作を読んで疑問に思ったり合点がいかないところを小気味よく裏切って引っ繰り返してくれます。此のような話の展開もあり得るのだと納得します。
今作の『おやゆび王子の初恋』についても其れは言えます。
主人公のミルフェ・ブラネットは孤独ですが、善良で機転が利いて謙虚です。魔法使いの危機に咄嗟に対応して自らの危険も顧みず野犬に自分の食事を与えて彼女を助けます。野犬にも知性と心がありますから、心優しいミルフェの手から食べ物だけを咥えて取ります。決して、彼の手を咬もうとはしないのです。
ミルフェは魔法使いからお礼に妖精を見る目と植物の種を貰います。願いを叶えてくれるというお約束ごとにも彼はすぐには貰おうとはしません。人助けは当たり前と思っているのでしょう。そんな彼だから魔法使いは問題な王子を託してみることにしたのでしょう。そして、彼女の願い通りにミルフェによって王子は本来の善良な姿を取り戻すことができます。自分の為に泣いてくれる人の為に清く正しく美しく生きようと決意した王子は彼と共に生きていく未来を掴んだのでした。めでたしめでたし。