熱砂の相剋 ~獅子は竜と天を巡る~
」のレビュー

熱砂の相剋 ~獅子は竜と天を巡る~

戸田環紀/小山田あみ

竜は翼が無くても空を翔、獅子は地を駈ける

ネタバレ
2024年1月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 小山田あみ先生のイラストと試し読みに惹かれて読んでみました。
表紙のイザーク・カーレーンもミフル・スーレーンも美しい男たちには見えないような描かれ方ですが、其々が纏う宰相の衣装が美麗なのに目を奪われます。思わず拡大してじっくりと眺めてしまいました。
王国の中で親が相対する地位にあったイザークとミフルですが、知らず知らずのうちに幼少期に行動を共にし、離れがたく思うほどに心が結び付いた二人は、禍の目を摘みたい王の意志によって離されてしまいます。其々が八歳と六歳で離ればなれとなり、二十八歳と二十六歳で再び身近に暮らせるようになるまで、二十年もの長きに亘って陰になり日向になりミフルの動向を見守ってきたイザークでした。
イザークもミフルも忍耐とたゆまぬ鍛錬によって精神と肉体を極限まで極めた漢たちなのでしょう。
王家の策略により追放の憂き目にあったことを深く恨んだミフルの母の侍女によって、魔獣を戒めた獄の鍵が開けられ、多くの魔獣との闘いの最中に過去の重大な事実が顕わになってきます。容貌までもが酷似した嘗ての勇者たちの強い結びつきに、ミフルは此の終わりなき魔獣戦を制する糸口を見出します。首尾よく全てを丸く収めたミフルは多くの人々に称賛され愛される霊獣使になることができました。
イザーク程の漢に長年愛されてきたことに今更ながら気付いて、自分の中にも彼を愛おしく想う心が連綿と続いていたことを知るミフルでした。
一般小説に『天下四国』という七冊に及ぶ壮大な物語があるのですが、其の主人公たちは結ばれない運命だったので、此方の小説では幸せな結末なのが何とも言えず嬉しいのです。興味が有れば読んでみてください。中村ふみ氏の講談社文庫の本です。
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